ネット文化が生んだ『炎上』とは

 

「炎上」と聞くと、真っ先にネット上で特定の人が不特定多数の人に攻撃されているのを思い浮かぶ。

 

先日は1本のアメリカンフットボールの試合動画が着火点となりSNS上で炎上し始めて

 

あまりの火の勢いにネットをこえて現実の世界にまで飛び火してしまい、

 

結果として加害者の選手による記者会見およびその責任者である監督・コーチは辞任することになってしまった。

 

そもそも、「炎上」というのは人々にとってどのような行為なのであろうか。

 

ただのストレス発散のような単純な動機だけではなさそうだ。

 

そんな中、たまたまドワンゴの川上量生さんが一部寄稿されている、

 

「角川インターネット講座(4)ネットが生んだ文化」にそのモヤモヤを解決する内容が書かれていたので、

 

様々な炎上事例と当てはめて考えていきたい。

 

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炎上は『社会を創り出す場』である

 

結論として、ネットにおける炎上とは決してネガティブなものではなく、

 

総論すると炎上という場を元に人々がそこで社会性のあり方を確認し、そこから自らの手で社会を前へ動かしていこうとするモチベーションが働いている

 

極めてポジティブなものだということがわかった。

 

この結論を導き出すためには、大きく2つの視点から見ていく必要がある。

 

1つめは、ネット上にどのようなイデオロギーが存在するのかをみる。

 

炎上するためにはまずその話題に火が着火される必要があるが、

 

それは違う価値観を持っている集団同士の摩擦から発生する。

 

その集団間の境界線について見ていく。

 

2つめは、集団行動における人々の欲求について整理する。

 

我々はインターネットというテクノロジー上で活動をしているが、

 

結局は情報を発信・受信をしているだけの人間同士のコミュニケーションツールにしか過ぎない。

 

ネットからは少し離れてみて人の集団行動における心理について考えてみる。

 

最後に、これら2つの視点からこれまで発生した炎上事例を当てはめてどのケースに該当するのか考察をしてみる。

 

ネットが作った文化圏

 

日本におけるインターネットサービスの開始は今からおよそ30年前の1990年代から。

 

その30年の間にネット空間の中にはどのような文化圏が生まれ、

 

活動されているのか振り返って見ていく必要がある。

 

炎上起因関連マトリクス

 

これは僕が著書を元にネット内の文化圏を整理したもので

 

著書を読んだ限り、炎上に関わるネット上にある大きなイデオロギーとしては

 

2つの軸が影響していることが分かった。

 

  • ネット原住民と新住民
  • 社会秩序を守る人とそれを変える(守らない)人

 

 

これらのイデオロギー同士がぶつかり合う接点で炎上が発生している。

 

このマトリクスに沿った炎上事例は後述するにして、次にこれら2つの軸の意味について説明をする。

 

ネット原住民と新住民について

 

インターネットが使えるようになって、みんなが一斉に使い始めたわけではない。

 

使い始めた人には何かの特徴がある。

 

人間の歴史を振り返ってみるとわかりやすい。

 

アメリカ新大陸が発見されてから移住を始めた主な人たちは

 

ヨーロッパの階級社会の中で富の配分の不均等・格差の拡大により、

 

恩恵の少ない下層レベルが、外に活路を見出そうして新大陸に行ったといわれてる。

 

つまり、ネット原住民とは能力あり・なし、お金持ち・なしに関わらず、

 

現世界に馴染めなかった人たちであることが推測される。

 

現に20年前のインターネットのイメージは

 

現世界の人々にとって少しネガティブなイメージを持っていたところにもつながるところがある。

 

そんな現世界からいち早く移住したネット原住民にとって、

 

後になってたくさんの新住民が移住し始めるとどのような事が起こるかはかんたんに想像できる。

 

自分たちの文化やルールが踏みにじられる、侵食されていくとなると原住民の反撃が始まる。

 

この原住民と新住民の文化的衝突がまず炎上における主なパターンとなる。

 

たいがいのケースは炎上される側が何かを発信することで

 

ネット原住民に「攻撃」を仕掛けており、それが少なくともネット原住民の誰かを傷つけてしまう。

 

つまり、ネット原住民による炎上は「先制攻撃」ではなく、あくまでも「反撃」である

 

ということは頭に入れておかなければならない。

 

社会秩序を守る人とそれを変える(守らない)人

 

もうひとつの軸はネットに限らずリアルの世界にもある話で、

 

・法律はもちろんだが社会的モラルを維持していこうとする人

VS

・今の世界に嫌気をさしそれを変えていこうとしていく人

・そもそも社会的ルールから逸脱した発言・行動する人

 

との衝突である。

 

こちらは圧倒的に、ルールを変えようとする人・守らない人に対する炎上がメインとなり、

 

目的は社会的制裁に近いものがある。

 

この手の炎上はネットだけにとどまらず、リアルな世界に飛び火してしまうことが多く

 

ネット以外のプラットフォーム(メディア)でもお目にかかることが多いと思う。

 

こうやって、大きく2つのイデオロギーの境界線で摩擦が発生し「炎上」に発展する。

 

『炎上』の源泉となる人々の集団心理について

 

集団の接点を見た次は集団の中に目を向けてみる。

 

ある組織が組織として成り立ち続けるためにはそのメンバーが定期的に集まり、

 

その意志を組織として確認しあう必要がある。

 

それは地域であっても、会社であっても、学校であっても

 

どこかの組織に属してきた皆さんであれば少なくとも経験があると思う。

 

その最たる仕組みが「宗教」であり、その仕掛けが「祭り」である。

 

その「祭り」には2つの大きな側面があり、

 

「破壊的沸騰」と「創造的沸騰」がある。

 

2つの言葉の意味については次の通りである。

 

破壊的沸騰

 

「魔女狩り」を思い出してもらうとイメージを捉えやすい。

 

以前「魔女狩り」という本を読んでいた中のフレーズに以下のような表現があった。

 

人間は宗教的信念をもってするときほど、喜び勇んで、徹底的に、悪を行うことはない。

 

つまり、集団の行動心理として目標達成や問題解決のために

 

行動を正当化してしまい攻撃を行う場合があるということだ。

 

現代においては今回のテーマである「炎上」が破壊的沸騰の活動そのもので、

 

祭りは祭りでも「血祭り」のようなものである。

 

参考

なぜ魔女狩り/魔女裁判が行われていたのか

 

創造的沸騰

 

破壊的沸騰が「血祭り」なのであれば、創造的沸騰というのは「祭り」のようなものとなる。

 

さきほどのケースを同じようにあてはめると、

 

こちらは宗教的信念に基づいて「聖なるもの」を祭り上げることをみんなで執ることによって、

 

そこから社会が創り出されるということである。

 

五穀豊穣や雨乞いを祈願したりするような行為はまさにこの典型例で、

 

みんなで集まり「祭り」をすることでその社会の結束力が高まる。

 

ネット文化のなかで例をあげるとすると、「うまい棒祭り」などは

 

非リア充の人の結束力を高めるためのネット上の「祭り」になっていたりする。

 

(こっちの祭りも興味があるが、今回はこれ以上の説明は割愛する。)

 

炎上事例から考える

 

次は上記で説明した炎上起因マトリクスを使って、

 

これまで発生した実例を元にに検証していく。

 

はあちゅうさんの例

 

 

まるで炎上を手玉にとっているような人だが、攻撃の矢先は主にネット原住民に向けられている。

 

「童貞」「偏差値40」発言にあるように、

 

現実世界から移住したネット原住民にとっては

 

相手を見下すような発言をあたかも自分に攻撃されているように捉えてしまいがちになる。

 

まずはネット原住民→ネット新住民への攻撃の構図が見える。

 

攻撃という形ではあるが、現実世界では表現することができなかったネット新住民なりの社会参加といってもいい。

 

次にネット新住民から彼女を見ると、ネットを活用して既存の社会規範や社会秩序を軽やかに乗り越えていこうとする彼女の生き方に嫉妬をしてしまう。

 

ただし、炎上の大きさはネット原住民に比べると小さい。

 

彼女にはファンも多いがアンチも多いというのは

 

ネット新住民でも保守派(アンチ)と改革派(ファン)という風に整理できるのではないだろうか。

 

ちなみに彼女の場合はネット原住民との炎上が多く、主戦場はあくまでもネット。

 

なのでリアルな世界では知らない人が多く、炎上しても世間の話題にはあまりならない。

 

日大アメフト違反タックルで炎上の例

 

最後に冒頭で話をあげた日大アメフトの例。

 

これはさきほどのネット原住民への攻撃というよりは、

 

社会規範に反するような行動に対して、ネット原住民、新住民に関わらず

 

保守派→改革(違反)者への攻撃となっている。

 

この例においては着火剤となったのはネット原住民ではなく、

 

SNSにおけるアメフト関係者(保守派/新住民)からの拡散から始まり、

 

後追いでネット原住民が色々と素性や事実を暴きながら、最終的にはネットを飛び越えてしまった感じだ。

 

社会規範に反するような例は、ネットだけに限らずリアルな世界に飛び火するケースがとても多い。

 

他にもアルバイトの悪ふざけや違法行為についても同じで炎上どころでは済まない結果となっている。

 

この炎上を通して、罵詈雑言のノイズもたくさん発生したが、

 

日大の経営体質問題や体育会クラブの運営在り方など様々な議論が行われており、

 

今後より良い方向へと向かおうとしている。

 

こちらの例はまさに炎上によって新しい社会を創り出す場になっているのではないだろうか。

 

まとめ

 

ネットは中国など一部の地域を除いては、国の一番偉い人が発言しようと市民が発言しようと

 

フラットで誰でもその内容を見ることができるようになった。

 

これにより、現実世界ではなかなか把握することができなかった「現実世界に馴染めない人達」は、

 

自分たちの意見・考えを現実世界の人達に対して主張することができるようになった。

 

また、社会規範にたいして逸脱している事案に対して、

 

様々な角度から意見・エビデンスを集めることができるようになり、

 

それらを元に社会全体に問うことができるようになった。

 

ネットによってこれまで現実世界では表沙汰にならないようなことが「声」となって集まり、

 

それらが社会に影響を与えることができるようになったのではないかと思う。

 

しかし、一方で炎上によって個人情報が晒されたりなど執拗な活動につながってたり、

 

炎上を恐れて尖った意見が発信されないような世の中の流れになりつつもある。

 

このように炎上の場とは、「攻撃」というエネルギーが渦巻いた紛糾・迷走の場であり、そこで我々は一進一退を繰り返しながらも着実に新しい時代への道のりを進めているのではないだろうか。

 

ここ最近人気が低迷していると言われている、日本におけるアメリカンフットボール。

 

今回のような熱量がある限り、まだまだ衰退するわけにはいかない。

 

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おわり

 

 

 

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神戸で働く、ITエンジニア   IT×グローバル×医療で世の中に貢献できるよう、日々奮闘中。 スポーツと海外旅行が趣味です。